貴方を・・・




曹操は朝議に姿を見せない司馬懿を気にかけていた。

意外に律儀なところがあり、無断で休むこともなかったのだが、

彼が休んで、当に五日も経っていた。

とりあえず、曹操は司馬懿の館と自室に使いを出した。

司馬懿は普段から、仕事部屋として、丞相府にある自室を使っていた。

しばらく経ってから、司馬懿が行方不明という事実が発覚した。





丁度、同じころ。

魏と蜀との国境付近の寂れた廃村に二人の若い男がたたずんでいた。

司馬懿と諸葛亮であった。

ただ、司馬懿の両手は縄で縛られ、寝台にくくり付けられていた。

「司馬懿、朝食ができました。あまりおいしくはないでしょうが、頂きましょう」

二人の前においてあるのは、新鮮な魚と山で取った山菜。

縛られているとはいえ、ご飯を食べるには不便ではあったが、食べられないことはなかった。

たどたどしく、司馬懿は縛られた両手で食事を胃におさめていく。

「いつまで、ここにいるつもりだ、諸葛亮」

毎日、繰り返される問い。

それに諸葛亮がまともに答えることはなかった。

魚を手にして、ニッコリと笑みをこぼしてから。

「貴方とずっといたいですから。無期限でしょうか?」

と、答えるだけ。

「そんなことを聞いているのではない。真面目に答えろ。馬鹿めがっ!」

その答えに司馬懿は反論していた。

が、こう何日も同じ答えが返ると、返す言葉さえも面倒になってくる。

司馬懿は無言のまま、目の前に差し出された朝食を口にほお張った。

隙をついて、逃げる。

それだけが、司馬懿の思考を支配していた。



ことの始まりは何のことはなかった。

司馬懿の元に諸葛亮から手紙が届いた。

一度、会ってくれ。という内容だった。

戦場で知略を交え、興味を抱いたのは確かだった。

どんな意図があるか知らないが、司馬懿も会ってみたいと感じていた。

それで、共の者を数人ばかり、引き連れて会いにいったまではよかったのだ。

場所は蜀と魏の国境沿いにある廃村。

廃村といっても近くに川が流れ、山もある。

数年前までは人が住んでいたのだ。

幾度の戦でこの場所から追い出されたのだった。

「それにしても、何故この場所を選んだ」

司馬懿は単に国境の境だけとは到底思えなかった。

何かあると思って、警戒はしていたのだが、

諸葛亮はくすっと笑みを浮かべたままだった。

しばらくして、共の者が苦しみだし、その場に倒れこみ、意識を失った。

「諸葛亮っ!貴様っ、何をし・・・・ぅ・・・」

司馬懿は、言い終わらないうちに、静かに意識を失った。

「大丈夫ですよ、貴方には睡眠薬。

共の者には致死量には至らない微量の毒です。

しばらくすれば、目覚めるでしょう。

貴方との逢瀬を邪魔されたくないですからね・・・」

司馬懿は意識を失う前に諸葛亮の笑い声を聞いた気がした。




諸葛亮は司馬懿の連れてきた共の者を近くの山林へと運び、そのまま放置した。

司馬懿の元へ戻っても、彼はまだ、意識を失ったままだった。

諸葛亮は司馬懿の頬に手を静かに添えると、その形のいい唇に自分の唇を重ねた。

「司馬懿、貴方をずっと見ていました。ずっと・・・」

司馬懿を見つめる諸葛亮の瞳の奥には狂気の炎が静かに揺らめいていた。


最初の数日はごく普通だった。

薬を盛られたことに腹が立ったのだが、自由を奪われていたので断念。

姿の見えない共の者の安否も気になったが、

諸葛亮が何故、そこまで自分に構うのか気になっていた。



そして、現在に至る。

朝食を終え、片付けも終わった諸葛亮は、不意に司馬懿のそばに歩み寄った。

「司馬懿・・・」

ガバッと、諸葛亮に抱きしめられ、司馬懿は冷静さを失った。

「な、何をするっ!!!」

司馬懿は諸葛亮を突き放そうとするが、うまくいかない。

「司馬懿、ずっと想っていました」

諸葛亮は抱きしめながら、耳元でそうつぶやいた。

諸葛亮の息が耳の中を通る。くすぐったさと気持ち悪さで司馬懿の身体が震えた。

「貴方のすべてが・・・欲しいのです・・・司馬懿・・・」

諸葛亮は司馬懿の耳たぶに歯を立ててから、首筋を舌でなぞった。

「っ・・・!や、やめろ・・・諸葛・・・」

司馬懿の身体は拒絶反応を起こして、震える。

そんな司馬懿が可愛くて、諸葛亮の舌先はさらにエスカレートしていった。

司馬懿の胸肌を開き、舌を這わせる。

少しずつ、食すかのように、ゆっくりと、丹念に、舌を這わせ、味見をする。

「司馬懿・・・思ったとおりの極上のお味ですね・・・」

諸葛亮の舌と唇が司馬懿の胸の先端に触れると、司馬懿の身体が今まで以上に跳ね上がった。

「んん・・・ぁ・・・」

少しつづ、荒くなる司馬懿の息に諸葛亮は笑みをこぼした。

「乳首でいったのですか?司馬懿・・・どうやら、貴方は敏感すぎるようですね。

なら、ここはもう、すごいことになっていることでしょうね・・・」

諸葛亮は片手を司馬懿の下腹部にずらした。

服の上からでもわかる、司馬懿の熱いモノがドクンと脈打っていた。

「や、触る・・・な・・・」

司馬懿の制止もむなしく、諸葛亮は服を一気に下ろし、その熱くなった司馬懿のモノに手を触れた。

すでに先走りで濡れていた。

「司馬懿、もう限界が近いようですね。私もそんな貴方を見て限界なのですが・・・」

諸葛亮は司馬懿の片足を肩に乗せ、自分のモノを司馬懿の秘所にあてがった。

「司馬懿、挿れますよ」

「ま、待っ!!」

ズッと、鈍い音とともに、痛みが司馬懿の身体を走った。

必死に痛みを堪える司馬懿を見つめながら、諸葛亮は最後まで司馬懿の中に押し込み、

そして、やさしく、司馬懿を抱き上げた。

「司馬懿、好きです。私は貴方を愛しています」

諸葛亮は激しく動きながら、司馬懿に口付けをした。

「はぁ、ぁ・・・ん・・・」

司馬懿は身体の中に諸葛亮を感じながら、その身を委ねていた。

そして、二人は何度目かわからない欲をその身に吐き出していた。



その日から、ただ、互いの体温とその存在を確かめながら、欲のままに抱き合う日々が続いた。。

一日中、つながったままでいたときもあった。



そんな、とある日。

「はぁ・・・」

司馬懿は諸葛亮とつながったまま、ため息を吐いた。

何度、身体を重ねたのかもわからない。

身体が互いを求め合い、世界に二人だけしかいないような不思議な空間で、

諸葛亮は司馬懿を抱き上げたまま、そのつながりと温もりを感じていた。

「諸葛亮、私は今日、お前と会えたことをうれしく思う。」

司馬懿はあくまで無表情のままで、静かに言葉を吐いた。

「私もですよ、司馬懿。ですが、私と貴方は敵同士・・・」

諸葛亮は憂いを帯びた表情をおとした。

ふと、司馬懿の両腕が諸葛亮の胸板に落ちる。

鈍い音。

「司馬懿・・・?」

諸葛亮はその両腕に視線を落とした。

「・・・もっと早くにこうすればよかった・・・」

諸葛亮の胸から赤い血が流れていた。

「司馬懿・・・私は・・・貴方を・・・・」

薄く笑みをこぼして、諸葛亮は司馬懿の身体に崩れた。

「そう、もっと早く、こうすれば・・・よかったのだ・・・」

司馬懿は顔を伏せ、熱いものが流れるのを感じた。


「仲達、怪我はないかっ!」

そこへ、曹丕が慌てたようすで駆け込んできた。

少し後ろに控える者は司馬懿と共にやってきた共の者たちだった。

「・・・子桓様。」

曹丕は司馬懿の姿に驚いたが、司馬懿が無事だったことに安堵する。

司馬懿は徐々に冷たくなっていく諸葛亮の身体を押しのけ、立ち上がった。

ずるり。

と、諸葛亮の身体が支えをなくして倒れこんだ。

司馬懿と諸葛亮の欲のあとが痛々しかったが、曹丕は自分のマントを司馬懿にかけてながら、肩を支えた。

「子桓様。彼の遺骸を丁重に蜀へ送って頂けませぬか」

司馬懿の言葉に曹丕は顔色を変えた。

「お前をこんなにしたヤツをか?」

司馬懿はクスッと笑みを浮かべて。

「それが私が諸葛亮に対するせめてもの、誠意なのだ・・・」

曹丕は静かにうなずいた。

諸葛亮の顔はただ、安らかに笑みを浮かべていた。


――司馬懿、好きです――




おわり




アンケートでみごと1位のCPになった諸葛亮×司馬懿小説です。
うわぁ〜。孔明さん、変態入ってるかな。
私にしてはHがんばった方だよ。って私の頭がイカれてましたが。
司馬懿が最近、痛いのばっかでかわいそうなんですが、
孔明さんのHって何か、ネチネチしてそうだな。と思ってたら、こんなになってしまいました。
どうやら、縛り系は好きなようで、私が(汗)
死にネタ、陵辱系、痛い系多いのは私がたんに好きなだけです。
では、また、今度おあいしましょ。