駆け引き





「っ!!!」

司馬懿は突然の出来事に、小さくうめき声を上げた。

動物のように四つん這いになり、片手は後ろで羽交い絞めにされ、顔は寝台に押さえつけられる。

軽く息を整いながら、司馬懿は背後にいる者へ睨みつけた。

「どういうつもりだ、夏侯惇将軍?」

司馬懿は慌てることもなく、静かに口を開いた。

突然、部屋にやってきて、このように押し倒されたのだ。

司馬懿にしてみれば、必然とイライラがつのる。

が、慌てたところで、体力が消耗するだけ。

騒ぎを駆けつけ、人がやってくるかもしれない。

どんな状況にも、対処できるように冷静な判断は、さすがといったところだ。

しかし、こんなことをされるいわれはない。

しかも、夏侯惇に、である。

夏侯惇は司馬懿の問いには答えず、羽交い絞めしていた手を放す。

手を開放され、司馬懿は安堵の表情を浮かべたが、再び、司馬懿の顔に緊張が走った。

間をおかずに、夏侯惇の手が司馬懿の双丘の間に割って入った。

「な、何をっ!!」

さすがの司馬懿もみるみる内に恐怖感が募っていく。

これから何が始まるのか、想像はつく。

そんな恐怖よりも訳がわからなくてされることの方が、司馬懿には恐ろしかった。

相手は真面目な夏侯惇なのだ。

気性が荒いというが、今までこんなことはなかった。

ごく普通に会話をしていた程度。

とりとめ、仲がいいとはいえなかったが、彼の人となり大抵のことは把握していたつもりだった。

その夏侯惇が司馬懿を襲っているのだ。

双丘を這い回る、漢の指が秘所にゆっくりと埋め込まれていく。

「ひっ!」

司馬懿は恐怖に駆られ、声を上げた。

中をかき混ぜられている気持ち悪さが司馬懿を襲い、体がゾクリと震えた。

「・・・司馬懿、加減はしない。覚悟しておけ・・・」

夏侯惇は指を抜きながら、静かに声を吐き出した。

低く、怒りを抑え込んでいるような声だった。

その夏侯惇に司馬懿はますます、わけがわからない。

ただ、彼が【何か】が原因で怒りを抑えているのだけはわかった。

それでも、司馬懿に置かれている状況はよくはなっていない。

「将軍、一体なにが・・・!?」

司馬懿はそう、聞き返そうとしたとき、鈍い痛みが身体の中を駆け抜けた。

「・・・さすがに、キツイな・・・」

夏侯惇はキュウと締まりつける司馬懿の秘所に軽く舌打ちをすると、

有無をいわさず、一気に己がモノを押し込んだ。

司馬懿の身体が痛みで跳ね上がった。

「く・・っぁ・・・」

そして、司馬懿は不本意ながらも、意識を失った。



夏侯惇は意識の失った司馬懿の身体を洗い、服も着させた。

夏侯惇は司馬懿の隣に腰かけ、彼の顔を見つめていた。

怒りに身を任せていたとはいえ、やりすぎたという思いが夏侯惇にはあった。

だが、殺したいほどの男なのだ。

関羽と同じくらいに殺したい。

この手で。

そう、障害となるのなら・・・ば。

障害になる前に。

殺めようと思った。

司馬懿を初めて見たとき、直感で思った。

この男は危険だと。

孟徳の妨げになりうると。

だから、殺そうと思った。

でも、できなかった。


「ふっ、俺はまだまだ、甘いようだな・・・」

夏侯惇は誰にいうでもなく、一人つぶやいた。

「・・・落ち着いたところで訳を聞かせていただこうか」

いつの間に起きたのか、司馬懿は薄ら笑みをこぼしていた。

夏侯惇は驚きはしたものの、そこには普段の温厚な顔があった。

「・・・俺はお前を殺したいと思った・・・」

ポツリとつぶやく、夏侯惇に司馬懿は思わず笑みを浮かべた。

司馬懿は夏侯惇の首の後ろに手を回すと、彼を引き寄せた。

「いつでも殺しにくるがいい、私はそれでも構わぬ」

司馬懿は夏侯惇の耳元でささやくと、唇を重ねた。

ガリッ

と、司馬懿は夏侯惇の唇を噛んで、離した。

夏侯惇の顔が一瞬、痛みで歪んだ。

「ふん、その言葉、後悔させてやるぞ」

夏侯惇はそんな捨てセリフをはきながら、司馬懿の部屋をあとにした。

司馬懿は夏侯惇の血の味が残る唇を舌でぬぐう。

「当分は飽きることもなかろう・・・」

曹操のためだけに動く、男。

それを手にするもの、一興。

司馬懿は薄く笑みをこぼしていた。






おわり。





アンケートの結果、1位に輝いた夏侯惇×司馬懿でございます。

あれ?最後は何故か司馬懿の方が攻めっぽく感じましたが、

夏侯惇があいかわらず、曹操一筋なのが笑えましたが。

この二人は曹操か曹丕位しか共通点なさそうなんで

どうしようかと思いました。

やっぱり司馬懿は無理やりが多いです。

何でだろう。そういうキャラなのかなぁ?

ま、微妙ですが、楽しんでいただけると幸いです。