子桓様は・・・もしかして××?










今日も月が煌々と輝いていた。

曹丕の部屋にはいつものように司馬懿がいた。

寝台の上に座っている司馬懿に対して、曹丕は隣で寝そべっている。

それでも司馬懿の顔を覗き込んでいた。

髪の結わきを解き、長く伸びた司馬懿の髪を手で弄びながら、

曹丕は静かにいった。

「仲達・・・お前の髪は本当に美しいな」

男に美しいと言うのは変だが、本当のことだから仕方がない。

意外にも司馬懿は悪い気はしていないらしい。

ほんのり頬が紅潮している。

「子桓様、そういうことは女性にいうものです」

「お前だから言うのだ。それとも・・他の女に言っていいのか?」

曹丕は悪戯な笑みを浮かべて、司馬懿の様子をうかがっていた。

司馬懿はただ、顔を赤く染めつつ、黙りこくってしまった。

「・・・実のところ、今だからいうがな・・・」

曹丕は少し恥ずかしそうにポツリと口を開いた。

その変化した口調に司馬懿は曹丕の顔を覗き込んだ。

曹丕はまだ、司馬懿の髪を指に絡めたりして遊んでいた。

「初めて、お前を遠くから見たとき・・・綺麗だと思ったのだ」

司馬懿の心臓が鳴った。

ドキッとするほど、ハッキリと感じた。

そんな司馬懿を知らず、曹丕は言葉を続けた。

「お前のその髪が美しいと思った・・・・」

司馬懿は一瞬。自分の耳を疑う。

髪が綺麗・・・と?

「・・・子桓・・・様」

「・・・まぁ、怒るな、仲達。まだ、話はつづくぞ」

司馬懿はため息を吐くと、自分は髪に負けたのか。

とショックを受けつつも、曹丕の言葉に耳を傾けていた。

「それでな・・・その髪に触りたいと思ったのだ」

ほんのりと頬を赤く染めて離す曹丕は恋をする少年のような表情だった。

司馬懿はその顔を見て、自分まで幸せになっていく感じがした。

「子桓さま・・・私めの髪でよければ・・・いつでも」

司馬懿は軽く微笑みながら、顔を近づけた。

決して、他の誰にも見せない顔。

「仲達・・・お前、本当はおかしいと思っているだろう?」

「・・・いえ・・・」

曹丕はさらに指に髪を絡ませつつ、司馬懿の首の後ろに手を回す。

そして、そのまま自分の方に引き寄せる。

「私の許可なしに髪の毛を短くするなよ、仲達」

曹丕は冗談交じりにそう、言うと、唇を重ねた。

「ええ、もちろんです」

司馬懿は曹丕の意外な趣味?を見たことで、

さらに彼に対する想いが募ったそうな・・・。




おわり