恋慕






「姜維、どうかしましたか?」

諸葛亮は自分の部屋の前でたたずむ愛弟子の姿を見つけると、

いつもと同じように優しく声をかけた。

「丞相・・・」

姜維はその声にうつむき加減だった顔をあげた。

その表情はいつもとは違う、ひどく憔悴しきった顔がそこにはあった。

諸葛亮は何もいわず、ただ・・・彼の背中を押して、部屋へと招いた。

寝台の横にある椅子に姜維を座らせ、自分は寝台へ、向かい合う形で座る。

「・・・姜維、大丈夫ですか・・・?」

諸葛亮は再び、優しく声をかけた。

突然、姜維の両目から大粒の涙があふれた。

さすがの諸葛亮も驚いた。

「・・・す、すいません、丞相・・・」

姜維は手でその涙を拭うと、何でもないんです。と言って席を立った。

それを諸葛亮は彼の手を掴んだ。

その反動で諸葛亮も立ち上がる。

「意味もなく、泣いたりはしませんよ。人は・・・・」

諸葛亮の憂いのある瞳が姜維を見つめる。

それに吸い寄せられる姜維がいた。

「・・・丞相・・・・!」

姜維はそのまま、諸葛亮に抱きつく。その両目には涙をためている。

その反動で、二人は寝台の上に転がる。

「きょ・・・姜維・・・?」

愛弟子の行動に少し驚く諸葛亮だったが、それで彼が安心するなら。と、

好きなようにさせてやろう。と思った。

「丞相・・・は、何処にも・・・行かないですよね・・?」

姜維は震える唇で静かに言った。

ふと、愛しいと諸葛亮は思った。

「大丈夫です。私は何処にも行きませんよ・・・」

諸葛亮は姜維の頭を優しく撫でた。

「・・・・本当にですか・・・?」

真っ直ぐに見つめる姜維の瞳。

諸葛亮はその姜維の瞳にたまった涙を手で拭うと、笑みを浮かべた。

「・・・私が今まで嘘ついたことありますか・・・?」

姜維は首を何回も横にふる。

「さぁ、もう、お休みなさい」

諸葛亮はいつもと変わらない優しい微笑みをむける。

「・・・もう少し・・・このままで・・・いてもいいですか・・・?」

諸葛亮は姜維の肩に手を添える。

細い肩。

細い線。

戦乱の世を渡るには無垢な精神。

諸葛亮の心に後悔の念がよぎる。

姜維には酷なことをしたのだろうか。

魏から蜀へと降らせ、そして、自分の後継者として育てている。

次の世代を担う、大事な人。

ただの諸葛亮のエゴなのだろうか。

一つでも後世に残したいという、それだけのための・・・。

息子たちとは違う気持ち。

「姜維、すみません。私は貴方に・・・酷なことをさせているのかも知れません」

諸葛亮はそういうと、姜維を静かに抱きしめた。

「・・・丞相・・・?」

姜維は突然のことに、驚き、諸葛亮を見つめた。

「姜維・・・辛いのですか・・・?」

「・・・・辛くは・・・ありません・・・」

諸葛亮が、そばにいてくれるから・・・。

さびしくもない。

彼が自分を必要としてくれている。

だから、がんばれる。

でも・・・・。

突然、自分の前から消えてしまうことが・・・怖い。

「・・・丞相・・・夢を・・・見たんです」

姜維は静かにポツリと口を開く。

「丞相が・・・」

その先はいえなかった。

とても哀しくて、さびしくて、辛くて、苦しくて・・・。

夢なのに、いえなかった。

諸葛亮はにこり。と笑う。

「夢は夢です。私はここにいるでしょう?」

可愛い、愛弟子。

頼れる愛弟子。

それでいて・・・大切にしたい。

諸葛亮は涙を流す、姜維をなだめながら、不意に。

その唇を重ねた。

姜維の顔が驚きに変わる。

しかし、その数秒後にその、両目は閉じられていた。

諸葛亮と姜維は寝台の上で横たわりながら、

永い永い口付けをかわした。



――姜維、今日は一緒に寝ましょうか?――

姜維は赤面しながら、静かにうなずいた。









おわり











ありゃ?
Hがなくなりました。
本当なら、Hシーンがあったんですが、
何か、甘々でいったら、こうなりました。
これはこれで気に入ってますが・・・
以前と別物になってしまいました。
途中まで一緒ですけどね(泣)
ちょっと、見づらい背景なんですけど、がんばって見てください(汗)
今、孔明×姜維を改めて書くと、H書けないです。
せめて、キス止まりですかね。
この二人も甘々系ですので・・・(笑)