一日遅れの幸せ…




俺で・・・かまへんの?本当に・・・俺で・・・・・?



――榊先生と跡部の二人。

過去に付き合っていたらしいよ――

そんなネタを忍足に提供してくれたのは、何故か山吹の千石だった。

そういう、裏情報というか、人の恋愛がらみの情報だけは何気に早い男だった。


何故、自分に話すのか。

それも跡部と忍足の関係を知った上で、教えてくれているのか。


今ひとつ、理解に苦しむ千石の行動だったが、逆に聞きたくない情報ばかりで気が滅入っていた。

「おい、忍足」

部活の帰り。明日は日曜日なので、多分今日も跡部のマンションに直行だろうか。

「・・・なんや?」

「何ボッとしてんだよ。俺の話聞いてなかったのか?」

不機嫌そうに、忍足を睨んでいる。

確かに何を話していたのか、忍足は聞いてなかった。

「あ、何の話や?」

「っざけんじゃねーよ、さっきから。しけた面して、いい加減ウザくなるぜ」

「せやから、謝っとるやろ?」

イライラと不機嫌な跡部に対し、半分どうでもいいような感じの忍足。

跡部はチッと舌打ちをすると、二人はそのまま会話もなく、跡部のマンションへとたどり着いた。

部屋に入っても、二人は無言だった。

跡部は忍足をベッドの上に座らせると、隣に座った。

「お前、何考えてンだ?」

「自分には関係あらへん」

「千石から監督と俺のこと聞いたンだろ?」

跡部のその言葉にさすがの忍足も顔を強張せた。

「・・・嫉妬でもしてんのか」

跡部は忍足の首筋に唇を落とす。忍足の身体が震えた。

「・・・そやない・・・」

忍足は跡部を引き離そうとしている。

跡部は忍足のシャツのボタンを外し、そのまま、忍足の身体に同じように唇を落とす。

忍足の白い肌が紅く染まっていく。

「・・・教えてやってもいいぜ・・・俺と監督とのこと・・・」

跡部はさらに、激しく、胸を中心に攻め続けた。

そのたびに、忍足の口から、吐息が漏れた。

「・・・っ・・・んん・・・あ・・・とべ・・・」

忍足の身体がふるっと震えた。

跡部は忍足のズボンを引きずらすと、すでに大きくなった忍足の中心たるそれを掴んだ。

「まだ・・・イかせねーよ」

そう、いうと跡部は忍足をうつぶせにさせた。

そして、忍足の身体から跡部の気配が消えた。

忍足の耳の奥で、後ろの方でゴソゴソと物音が聞こえてくるだけだった。

「忍足・・・望み通りイかせてやるよ・・・」

その跡部の声が聞こえた瞬間、忍足の身体に冷たい感触と違和感を感じた。

「な・・・?」

跡部はすでに準備の出来ている忍足の双丘の間にある物を押し込んだ。

「!!」

忍足の身体は反り返るほどの衝撃を受けた。

忍足は頭の中でそれがバイブだと感づいた。

「気持ちいいか、忍足?」

跡部はそういうと、それを動かし始めた。

「っん・・はぁ・・・」

その動きに反応して、忍足の身体が紅潮し、その口からは淫らな吐息が漏れた。

「忍足・・・綺麗だぜ・・・もっと美しくなれるはずだぜ」

跡部はその忍足の姿に酔いしれながら、彼の中に入っているバイブに触れる。

すると、今度はそれが小刻みに動き出した。

忍足はそのまま、跡部に見つめられながら、頂点に昇った。




目覚めたのは、まだ、朝日が昇る前。

ベッドにちゃんと寝かされ、隣には跡部がいた。何故か跡部が起きていた。

「跡部・・・起きてたんか・・・」

跡部はフッと笑みをこぼす。

「ずっとお前の寝顔を見てたぜ。昨日は悪かったな・・・」

跡部が謝ったということも驚いたが、

ずっと忍足の寝顔を見ていたという事実に何故か、忍足は恥ずかしくなった。

「・・・忍足、俺と監督とはもう、何でもないぜ。もう終わったことだ」

「せやけど・・・昨日・・・監督に何か受け取ったん・・・見てしもうた・・・」

昨日はホワイトデーだった。

千石からそんな話を聞かされて、もしかしたら・・・と忍足は不安になった。

跡部は、忍足の髪に触れるとさらに顔を和らげた。

「昨日、使っただろう? 監督は俺とお前の関係を知ってたんだよ。それに今、監督は日吉に夢中だ」

「え?昨日?使った・・・?」

忍足は頭が混乱した。昨日使ったのは・・・・・。

「監督、ソレ渡した時に、程々にな。と言ったんだぜ。まったくあんなの渡される身にもなって見ろよ」

跡部は呆れ気味に話していた。

跡部さえも監督の怖さを知っているので素直に受け取ったが、

今頃、監督の餌食にされているだろうと思う日吉に少しばかり、同情したり。

「・・・はは、なんや、俺の一人勘違いやったんやな・・・」

忍足は何だか、気が抜けた。

「忍足」

跡部は身体を起こし、ベッドの横にある台から一つの箱を取り出す。

忍足も、つられて、ベッドから身体を起こす。

「一日遅れになっちまったが・・・受け取れ」

跡部はその箱を忍足に差し出した。忍足はそれを受け取るとふたを開けた。

真ん中にリングがささっている。

羽をあしらった、プラチナリング。その隣にはチェーンもセットでかかっていた。

「俺様といるときは、チェーンでもリングでも好きな方をしてこいよ」

「・・・俺で・・・ええの?」

跡部は笑みをこぼすと、忍足を抱き寄せた。

「・・・お前じゃなきゃ・・・駄目だ」

「・・・俺・・・男やけど・・・それでも?」

忍足の両目に涙がたまっている。跡部はさらに強く抱きしめる。

「構わない。俺は忍足侑士に惚れたんだからな」

好きだぜ、忍足――

跡部は静かに、忍足に今まで以上に優しいKISSをした。

忍足の頬をあふれるばかりの涙が伝った。





おわり