嫉妬







俺様以外に…気を許すんじゃねーよ。ムカツクんだよ。





「ん
ふぅっ」

跡部の部屋。といっても実家ではない。

高級マンションの一室、それが跡部のもうひとつの家だった。

最近は実家に帰ることなく、ここで過ごすことが多い。

そう、今目の前にいる【忍足侑士】と共に―−

「はぁんンあともう堪忍や

ダブルベットの上に忍足が座っている。

跡部の方に体を向けて


足を広げて、忍足は自分の分身ともいえる存在に手をかけていた。

すでに紅く染まり始めた肌が悩ましい。

跡部は少し離れた所から忍足を見つめていた。無言のままで。

その視線が忍足にはすごく痛いだろうが、跡部はやめなかった。

「何いってンだよ、まだイってねーだろ?」

相変わらず冷たい言葉。いつもよりも不機嫌そうな顔。

それでも忍足はその、自分に向けられる視線から逃れられなかった。

好きだった……跡部の瞳。

性格はめっちゃ悪いが、その瞳の奥だけは素直だった。


忍足はそう、感じた。見つめられるだけで身体が高調する。

震える。でも恥ずかしかった。

学校が終わって、不機嫌な跡部に半強制的に連れてこられたこの部屋。

跡部は入るなり、忍足にこういった。

『俺様の前で、一人でヤって見せろ』

『はぁ、何やそれ?』

忍足は呆れ顔。当たり前だ。それでも跡部は自分の下した意見を覆さない。

『忍足、ヤレ』


跡部は再度、そういいながら椅子にドカッと座りだした。

こうなるとテコでも動かない。

『自分、何でそう不機嫌なん?何かオレ、ムカツクことでもしたん?』

跡部のわがままに忍足さえも段々不機嫌になる。

『お前には関係ない。さっさとヤレよ!』

忍足は深いため息を吐くと、やれやれ。といった様子でベッドに腰掛ける。

『やればいいんやろ?ただし、条件あんねん。その不機嫌の理由聞かせてもらうで


そう勢いでいってしまったのが、後の祭りだった。

「まったくなってねーな」 


不機嫌さは直ってないが、退屈でもしたのか跡部は忍足に近づくと、

そのしなやかな指で忍足の首筋に触れる。

――――

少し火照った身体が冷たい指に反応する。

跡部はその反応を楽しむように指を動かす。

衣服の乱れた忍足の身体のラインをなぞるように


「んっ


忍足の身体は震え、その口元からはさっきとは違う声が漏れた。

跡部の指に導かれるように、忍足は自らの手で絶頂を迎えた。

「やればできるやじゃねーの」


跡部はベッドに横たわる忍足を見つめながらそういった。

いくらか不機嫌さは直ったようだ。

「じゃぁ、教えてくれるんやろ?」

荒く息を吐きながら、忍足は隣に座る跡部を見る。

「まだだぜ」

跡部はそういうと、忍足の身体を引き起こすとそのまま唇をかさねた。

激しいくちづけ。窒息しそうになるほどの勢い。

「んっ
とべふぁっ

忍足は跡部の顔を引き離し、息を吸い込む。

が、十分な息もできないままに再び跡部の執拗な口付けを受けることになった。

やっと開放されたときには忍足はグッタリとしていた。

「他に


跡部が忍足を抱きしめたまま、ボツリと口を開いた。 

「他にないだろう?」


忍足は意味不明な跡部の言葉に顔をあげた。目の前に跡部の顔がある。

「何のことや?」

跡部は何をいわずに今度は彼の首筋に唇を落とし始める。

「跡部?ちょい、待ちぃや


忍足は必死に跡部を引き離そうとするが、やめようとはしなかった。

「お前、そんなにジローがいいのかよっ!」

「は?」


あっけにとられている忍足をよそに、跡部は不機嫌を募らせている。

「お前、ジローなんかに隙をみせてんじゃ、ねーぞ!」

その言葉に忍足はピンときて、笑みを浮かべた。

「何や、跡部。ジローに嫉妬したんか?」

跡部は忍足の顔を見ずに顔をそむけた。少し顔が紅くそまっている。

かわいいな。跡部」

「ふざけん


その忍足のことばに跡部は怒り、いや照れているのか、

一度背けた顔を元にもどした。

その隙に忍足はすかさず、跡部に唇を重ねた。

唇を重ねながら、忍足はジローとのことを思い出していた。


数時間前の放課後、校門前。

今日は部活がなく、まだ跡部からの誘いはない。

だから忍足は帰ろうと思った。校門を出たところでジローが寝ていた。

「おい、ジロー起きろや」

忍足はジローを起こそうと身体を揺さぶるが、起きない。

簡単に起きるとは思っていないが、もう一度さっきより強く身体を揺らした。

「ジロー風邪ひくで、起きろや」

起きない。どうしようかと悩んでいたとき、ジローが寝返りをうった。

その瞬間、二人の唇が重なっていた。

「っ!」


一瞬の出来事に忍足は目を見開いている。ジローは寝ている

そんな事件があったことを思い出した。

それを跡部が見ていたのならば、合点がいく。

しかし、今おもうと、ジローは本当に寝ていたのかどうかが怪しかったが、

忍足は気にしてはいなかった。

「跡部、可愛いなぁ〜」

忍足は笑みを浮かべながら、跡部のそんな態度に愛しさが沸く。

「てめェ、それ以上いうと殺すぞっ!もともとジローに隙をつくるテメェが悪いっ!」
 

跡部はムクツク忍足の口をふさぎ、再びベッドに身をしずめた。



おわり