深い闇の中で…





――何で、俺…【好き】になってしもうたんや――

跡部の相変わらず高級なマンション一室に入るなり、忍足は心の中でつぶやいてみた。

最近は、そう思うことが一段と多くなった。

外では普段の変わりない跡部だった。

だが、一度外から戻れば、ガラリと打って変わる。

それが跡部景吾≠サの人だった。

決して、それを見せるのは忍足との二人の時だけだった。

一人でも第三者がいれば、跡部は普段の変わりない跡部≠セった。

「忍足、今日は俺様に謝ることがあるんじゃないのか?」

いくつもある部屋でも、奥の部屋。

その中に二人連れ立って入るなり、跡部は忍足をベッドに押し倒した。

跡部の視線が忍足に注がれる。

「…そんなん…あらへん」

その跡部の視線を受け止めながら、忍足はボソッとつぶやいた。

「そうか」

跡部は無反応な返事をしたあと、忍足のYシャツの上から、胸の突起部分に触れた。

まだ、夏ではないにしろ、薄着にはなっている。

触れるだけでもそこは微かに熱を持った。

「ん…」

忍足の口元が緩む。跡部はじらす様に、忍足の<それ>を指でもてあそんでいた。

「本当は俺様が何を言いたいか、分かってんだろう?」

跡部の口元はゆがみ、忍足の反応を楽しんでいた。

胸だけを攻められ、忍足の肌は紅潮していった。

「ふぁ…か…堪忍…してや…」

忍足の身体は震え、その目は涙を溜めていた。

「お前が俺様に正直に謝ればすむ事だろ?」

――そうすれば、すぐにでも楽にしてやるぜ――

跡部はそうつぶやいた。だが、忍足の性格上そんなことが出来るはずもない。

「…くぅ…俺。何も…してへん…」

跡部は強情を張る忍足のYシャツ間から、静かに中に手を伸ばすと、今度はじかにそれをもてあそんだ。

「ひっ!!」

敏感になった身体はそれによって、忍足の意識を頂点へと追い込んだ。

「苦しいだろ? だが、まだまだイカせてやらねーよ」

忍足の中心たる存在が、熱を帯びて外へ出たいと暴れだしていた。

しかし、跡部はそれを許さなかった。

「あ…跡部…ホンマに、、、堪忍して…」

半分、泣きそうになっていた忍足だった。

「…そんな顔しても駄目だ。お前の中からあいつ≠消すまでは許さない」

跡部は何かを思い出したように、その表情に怒りを露にした。


そして、忍足のベルトを外し、ズボンを一気にずり下ろした。

その勢いで大きくなった忍足のそれがいきり立った。

「…忍足、これは罰だ。俺から逃れられないようにしてやるぜ」

「…な、何する…んや…」

忍足の顔が不安と恐怖に満ちて、どんどん青ざめていく。

跡部は忍足の双丘の間に指を忍ばせた。

「あ…」

忍足の身体を反転させると、跡部は忍ばせた指をゆっくりと動かした。

「や、、、ふぁ、、、あと・・・べ…」

忍足の身体が波打ち、その口から吐息が漏れた。

「嫌がっている割には準備万端じゃねーか、忍足?そんなに身体が恋しいのか?」

「ち…違…う…」

忍足はチラリと跡部の方に視線を向けた。

跡部が何故、怒っているのか。何故、謝れと言うのかが、忍足には分かっていた。

でも。それは…。

「あいつ≠ニ話してても、こんな風にしてるのか、お前は…?」

跡部は指の動きは止まない。指の数を増やし、怒りをぶつける様に加速する。

そのたびに忍足は頭が白くなるのを感じた。

あいつ%ッじ部の同学年の男。


芥川慈郎――のこと。

あいつ≠ヘ多分、忍足のことが好きなのだろう。

多分ではない。本気だ。

跡部は外にいるときは普段の跡部≠ネのだから、その二人がいるところを見ても見ぬフリをしている。

二人になると跡部≠ヘ豹変する。

異常に独占欲が強くなる。

「あぁ…跡部…あれは…何でも、、、ないんや…」

忍足の身体は汗で光っていた。

「お前は俺のモノだ。たとえ、何でもなくても許さないぜ」

そう、その唇も。その肌も。その視線の先も。全て…俺様のモノだ。誰にも渡さない――

跡部は双丘の秘所を攻めながらも、忍足の象徴をもさらに攻め続けた。

「あと…べ…」

忍足の声のトーンが下がる。

「忍足…許してやってもいいぜ…ただし、条件がある…」

跡部はそういうと、再び、笑みをこぼした。



「忍足…」

忍足の中で跡部は己が欲望を解き放った。

「あ…跡部…」

忍足もまた、抑え込まれていた欲望を解放し、二人はベッドの上でぐったりと倒れこんだ。


次の日の放課後。

跡部のマンションに、忍足と跡部の二人だけが異様な空間の中にいた。

「忍足、やれ」

跡部がそう、命令すると忍足は跡部の前にひざまずくと彼のズボンを下ろした。

――忍足、忘れるなよ。お前は俺のモノだということを――

跡部はそう、言った。

忍足もただ、うなずいた。

拒むことも出来たはずなのに、何故か跡部には逆らえずにいた。

――はぁ。何で俺、こんな奴、好きになったんやろうなぁ――

忍足はつぶやきながらも、すでに答えが出ていることを悟っていた。

『好きだから』

そして――すごく、忍足を好き≠ナいてくれているのが分かっているから――

「跡部…心配せんでもええわ。俺、浮気なんてせいへんから」

忍足は笑みを浮かべて笑った。

「浮気?当たり前だ。そんなことしたら、殺すぞ」

跡部の顔にも笑みがこぼれた。




「あ〜あ。侑ちゃん、落とせなかったなぁ〜」

慈郎はいい所まで言ったとは思っていたが、忍足は意外とガードが固かった。

慈郎にしては本気で好き≠セった。

それでも残念そうにしていたのは一瞬だけ。

あとはあくびを数回すると、そこら辺に寝転んでしまった。

「次は誰を狙おうかな〜ふぁ…」

そして、安らかな寝顔でその場で寝てしまった、慈郎だった。





『おい、慈郎。風邪引くぞ』

「ん…もうちょっと…」

『ったく、もう知らねーからなっ!』

向日岳人はその場から立ち去って行った。

「…侑ちゃん…」

慈郎は無意識のうちにつぶやいていた。



おわり