体調不良2





跡部…今は体調を治すことだけ考えろ。今は…



「…チッ…俺様がこんな…」

バタン。と跡部は部室で倒れた。と、同時に樺地が跡部を支えた。

「悪いな、樺地…そこのソファに寝かせてくれ…」

荒く息を吐く跡部に樺地は少し心配しそうに命令に従っていた。

「…跡部さん…大丈夫ですか…?」

微妙な日本語で樺地は跡部を心配した。

「心配するな…少し微熱があるだけだ…横になっていれば平気だ…」

スゥーと跡部は意識の奥へと誘われていった。

一人ポツンと残った樺地は横になった跡部にタオルやら自分のブレザーなどをはおってあげた。

そして、その部室から出て行った。



しばらくして…跡部は目を覚ました。

「ん…?」

そこには見慣れない光景。

いや、見たことがあるが、目覚めたばかりの跡部は思考が鈍っていた。

「目が覚めたか?跡部」

ゆっくりと起き上がり、声の主を確認する。

「か…監督…」

部屋の窓の側に氷帝のテニス部顧問の榊太郎が立っていた。

周りを見渡すと、どうやら顧問室のようだ。

「部室では冷えるだろう?お前に用があって部室にいったら、お前が苦しそうに寝ていた。

保健室よりもこちらの方が近いのでな」

榊は静かに状況を説明した。

「すみません、監督。お世話になりました…」

ベッドから降りようとする跡部を榊は制した。

「クスリを飲んでゆっくり休め。無理をすることはない。今は治すことだけを考えろ」

榊は戸棚からクスリを取り出すと、水と一緒に跡部に差し出した。

「飲めるか…?」

「はい…大丈夫で…」

ツルッ

シーツの上にクスリを落としてしまった。

力の入らない腕が跡部には悔しかった。

風邪ごときに…。

拾おうとして、腕を伸ばした矢先、榊が跡部よりも先にクスリを拾った。

「…あ…」

無論、クスリを渡してくれるのばかり思っていた跡部だったが、榊はそのクスリを自らの口に放り込み、水を含んだ。

跡部はその一瞬をスローモーションのように見つめていた。

熱とだるさでボゥーとしている跡部に榊はそれを含んだ唇を重ねた。

ゴクン

榊の口から跡部の口へに、そして…喉へ。

跡部は榊になすがまま、口移しでクスリを飲まされた。

静かに互いの唇が離れると、榊は何事も無かったようにクスリとコップを片付ける。

「…か…監督…?」

突然のことに跡部はわけがわからない。

榊には何でもないことなのだろうが、跡部の心臓はドキドキ。

風邪の熱以上に体が熱くなった。

「跡部。少し横になった方がいい」

窓辺に立つ榊と夕日が跡部には綺麗と感じながら、深い眠りについた。

…私が側にいよう…

そう静かにいった監督に甘えるように…。






おわり