天の川





「弦一郎…」

隣を走る柳はそっと歩みを止め柳は空を見上げていた。

星が輝いていた。

少し高い丘の上にいくとさらにそれは美しく映える。

真田と柳はしばらく、夜空の星々に目を奪われていた。

真田と柳は毎日、夜にジョギングに出かける。

それが日課になっていた。苦痛ではなかった。二人が一緒だったから。

ジョギングは始める前に、柳は一つの提案を出した。


「弦一郎、今日はコースを変えてみないか?」

その一言でいつも通らない道を通ることになった。

その途中にある丘。二人はそこでしばらく休憩を取った。

「弦一郎。今日は七夕だ」

「そうだったな」

短い会話。だが、何を言いたいのか、分かる。

「お前と、こうして星を見るのもいいなと思った…」

柳は星の輝きを見つめながら、少し笑みを浮かべていた。

「蓮ニ、織姫と彦星は年に一度だが、俺はずっとそばにいる」

真田は真剣な目でそう、柳に向かって言葉を放った。柳の顔が星から真田へと向けられた。

「弦一郎俺もお前のそばから離れたくない」

それは互いの願いというよりも望み。

「弦一郎もし――――」

柳はそっと、口を開いた。

二人の間に隔てる何かがあったら弦一郎はどうするのだろうか。

「その答えを俺の口から聞きたいのか。蓮ニ?」

「態度よりも言葉が欲しいときもある」

不安ではない。互いに信じているから。

でも、そういうときもある。

女々しいと思うが、感情に男女の差はないと思った。

ふわっ

真田は柳を抱きしめた。

走った後もあって、二人の身体は熱くしっとりとしていた。

「蓮ニ、今の俺はお前がいてこその俺なんだ。だからお前なしの俺は考えられない。」

自然と柳の頬に雫が伝う。

柳と同じ思い。

柳もそう思っていた。

真田あっての柳


「弦一郎俺も同じだ

二人は夜空に輝く星に見届けられながら、静かに抱きしめあった。

もし、二人の間に高い大きな隔たりがあったとしたら

蓮ニ、俺は迷わずお前の元へ行こう…

そして


お前を迎えに行く
真田は迷うことなく、そう言った。



おわり